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高森明勅
2011.11.21 14:20

陛下のご不例と新嘗祭

陛下のご入院が長引いている。

軽度の肺炎と報じられた。

震災に伴うご過労が原因なのは明らかだ。

ご高齢でしかもご病気の治療を続けておられる陛下は、ただでさえ苛酷なご公務を抱えておられる。

それに加えて、震災後は3月から5月にかけて7週連続で被災地にお入りになった。

更に自主的な停電等々、心身へのご負担は想像を絶したものがあったはずだ。

むしろこれまで新たなご発病がなかったのが不思議なくらいだろう。

だからこの際、どうかごゆっくりご静養して頂きたい。

国事行為の代行も、長めにされるくらいの方が、良いのではないか。

11月23日の新嘗祭は、陛下の年間の神聖な諸祭祀の中でも、取り分け大切なもの。

それを自ら執り行えないことは、陛下にとってさぞやご無念であるに違いない。

平成になって初めてのことだ。

しかし、ご不例や服喪により新嘗祭に陛下のお出ましがないのは、古代以来、これまでに前例はいくらもある。

明治の皇室祭祀令では、天皇がご幼少の場合はお出ましがなく、神のお召し上がりものを供えるのは、
掌典長が代わって行うことになっていた(御告文(おつげぶみ)の奏上と殿内での神人共食の儀礼は、さすがに代理は出来ないが)。

だから、今回のような場合は、お出ましがなくてもやむを得ない。

今は、ご静養にお努め下さることが、最も肝要だ。

年末年始は特にご負担が集中する。

宮内庁には、そのあたりについて、よほど慎重な配慮が求められる。

天皇誕生日と新年の一般参賀での陛下のお出ましは、陛下のご体調にもよるが、この度は大事を取る必要があるのではなかろうか。

出過ぎたことを敢えて申せば、代理が許されない元旦の四方拝も、早朝かつ屋外の行事であるだけに、絶対御無理のないよう、
お取り止め頂くことも視野に入れておかねばならないだろう。

国民も、今後は万般にわたり、陛下のご体調に配慮した行事の変更などに十分、理解を持つべきだと思う。

以前から唱えられて来た陛下のご負担軽減が、ご自身がそれを望まれなかったにせよ、余りにも後手に回ってしまった。

陛下の1日も早いご本復を祈り上げる。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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